もりのなか

リタイア後、初めて森のなかで連泊した。
水・トイレ・シャワー・ガスが使えるようになったので、ライフラインはOK。
そう思って泊まったけど、予想以上に寒いさむい。
慣れているつもりの私も、朝晩の冷え込みにマイッタ。
意地でもエアコンを設置したくないので、やっぱり薪ストーブが必須だな。

シラカバ、ミズナラ、ブナ、ヤマモミジ、クロモジ、ヤマアジサイ。
ゼンマイ、ワラビ、ギボウシ、ショウジョウバカマ、チゴユリ。
新緑の美しさ。
山野草の力強さ。
雪に負けず生きている。
鳥は聴き分けられないが、カッコウは鳴いてた。
木々が風でざわめき、木漏れ日がきれい。

夕食後、ぼんやり灯る中で読書をしていて、ふと違和感に気付く。
音がしないのだ。
日中あれほどせわしなく鳴いていた鳥もねぐらへ帰り、風も止み、不気味なほど無音。
いつもと何が違うのだろう。
そうだ。
一晩中うるさい蛙の鳴き声がしない。
車の通る音も、エアコンの室外機の音も、遠くで誰かが話す声も、猫も鳴かない。

漆黒の闇に、ただひとり。
音のある生活に慣れすぎた。
こんな経験はこれまであっただろうか、と不安になる。
初日は、明けがた鳥がさえずるまで、よく眠れなかった。


豪雪地の白樺の寿命は短い。
約30年。
雪で太い枝が折れてブラリ。
キツツキの穴が何カ所もあいている。
YouTubeを見ていたら、アラスカの森の中で暮らすご夫婦が、白樺のシロップを作っていた。
サトウカエデのメープルシロップは有名だけど、白樺でもシロップが作れるんだね。

雑草をむしっていたら、大きめの石が出てきた。
草むしりをやめて、発掘調査に精を出す。
石と石の間にモルタルが打ってある。野生化した玉竜も少し残ってた。
前住人が専門家に依頼したのだろうか。
そして小屋を使わなくなり、堆肥と共に土に埋もれ、その存在は消えてなくなる。
まさか石張りがあるとは思わず、駐車スペースの邪魔になるからと、大きな飛石2枚を埋めた。
この先に続いていたのに。
もう少し早く掘れば良かった。
何年も待っていただろうに、可哀想なことをした。
ぽっかり空いた長方形。
新しく敷石をはめようか。

発掘者みずから躓きそうや・・
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