ましろ 肆

ガリガリだった。
霧の中で初めて会ったときより、ひとまわり細くなり、全身うす汚れている。
臀部に脂肪がない。
歩くと肋骨が動くのが分かる。
この子は今日まで何を食べて生きてきたのだろう。
胸にこみ上げたけど、つらいのは私じゃない。

ギャーギャーが、途中からニャーニャーに変わる。
そっかぁ。。。ほんとはちゃんとニャーって鳴けるんだねぇ。
嬉しかった。

オヤツを取りに戻るが、私を見ると車の下へ。
おどかさないよう、そっと近づくけど、走って逃げた。
そりゃそうさね。
信頼関係ゼロですから。
ちゅーるを持った手を振りながら「また来るんだよ~待ってるよ~」と話しかける。

さぁ!
我が家がテリトリー内だと分かった。
来なくても、毎日美味しいごはんと新鮮な水を置く。

2023年8月3日早朝。
2箇所のカリカリを完食し、裏庭でくつろぐ姿を発見。
嬉しくて、ホッとして、心おどる。
ごはんがある事を知ってもらえば、もう大丈夫。
次も必ず来てくれる。
以降、狩りに行かずとも、次々ごはんが補充されると分かり、どうやら近くの藪に潜んでいるようだ。
真夜中から夕方までの好きな時間に現れ、たらふく食し、そのままスヤスヤ眠っている。
かわいい 。
2階が玄関で良かった。
広範囲が見渡せ、獣に襲われにくいし、しかも逃げやすい。

ゆっくり信頼関係を築き、撫でさせてもらえるようになりたいな。
と、悠長に構えるはずが、お盆が近い。
しばらく留守になる。
そのうえ台風直撃のニュース。
なんとしても!台風より先に保護したい!!

捕獲器の柵が落ちるかを何度も確認し、臨んだ8月10日の朝。
案ずるよりあっさりと。
『 シロネコ保護大作戦 』完了。


一緒に帰ろう。


2023年8月10日。
ソフトケージの中に仕込んだ捕獲器。
見えづらいけど白猫がいる。
捕獲器の柵が落ちた一瞬だけ驚いて暴れたけど、あとは自宅に着くまでとても静かだった。
予約していた動物病院へ。
まず最初にマイクロチップの有無を確認してもらう。無し。
未去勢の男の子だ。
血液検査・ウイルス ( FeLV ・ FIV ) 検査・尿検査・駆虫・爪切り・耳と口腔内の確認・レントゲン撮影・マイクロチップ挿入・去勢手術。
先生曰く、摘出した睾丸を見るとおおよその年齢が判るそうで、3歳位とのこと。
ウイルス検査の結果、猫後天性免疫不全症候群 ( FIV。猫エイズのこと ) 陽性のキャリアと判明。
それは最初から織込み済み。
そんな事で気持ちが揺らぐなら、保護してはいけない。
ストレスがかからない環境で、発症しないよう、長生きできるよう、大切に守るからね。


2023年8月16日。
環境に慣れるまで&ケージの中が一番安心と分かってもらえるまで、1カ月ほどケージ生活。
クーラーの効いた涼しい部屋で、食べては寝てを繰り返し、お腹がポンポコ。
ふっくらしてきた。
夜鳴きで、人間も寝不足のとき。



2023年9月11日。
夜鳴きも収まり、ケージから出て、家の中の探検や遊びに夢中。
保護時に柵でぶつけたのか、鼻の上や目の下のアザがまだ残っている。
FIVについての専門書を数冊購入。
動物病院の先生は、流血沙汰のケンカで先住猫を噛まなければ、まずFIV感染はしないと言われたけど。
後悔のないよう、箱入り娘ニャンズと白猫は、2世帯住宅で別々に暮らすと決めた。
当初は互いのエリアに行きたがったが、今はテリトリーが侵略されないので、先住猫も白猫も穏やかに暮らしている。
朝晩、脱出防止の柵越しに、ねこパンチの応酬と鼻ちゅーで挨拶。

出逢えて、うちの子になってくれて、ありがとう。
毎日しあわせをもらっています。


la fin ♡


名前は『 雪 』。
全身まっ白な、雪国の男子だから。
他は考えつかないよね。
女の子なら『 ましろ 』でした。


2024年3月2日。
和猫は寒がり。
寒がりサイベリアン2匹よりも寒がり・笑
過保護な人間のお姉ちゃんのブランケットにくるまれ、エアコン真下の温風でホコホコ眠る。

やっとこれで2024年に進めるにゃ。。。

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