おとろし

新緑眩しい窓の外の景色をおかずに、朝ごはんを食べていた。
時間はまだ早い。6時すぎ。
風もないのに、向かいの木の頭が左右に大きく揺れる。
おっ!熊か!?
揺れた木の足下に目を懲らすと、人間の脚が一瞬見えた。
脚が敷地に侵入しなかったので、さらに目を懲らす。
残念ながら超ド近眼の眼では、生い茂った藪の中が分からない。

しばらくすると、お隣さんの怒声が静かな山に響き渡る。
「おいっ! そこで何してんだ!!!」
頭の白いタオルを顎の下で結び、赤と黒のチェックのシャツを着たおじさんが、藪をかき分けノソノソと、お隣さんちの茂みの奥から現れた。
その後、怒ってる隣のおじさんと何を話しているのか聞こえなかったけど、たぶん山菜か山野草を盗りに、他人の敷地に侵入していたのだろう。

ここ1カ月、県外ナンバーの車が何台も市道に停まっている。
近くの地場産センターを覗くと、タケノコ、タラノメ、コシアブラ、フキ、ゼンマイ、ススタケ、コゴミ、ウド、ウルイ、ワラビ等々、週ごとにその時の旬の山菜が並ぶ。
ただで採ったものをお金に換えるのか、自分ちの1年分の保存食なのかは、人それぞれ違うだろうけど。
魅惑の山の恵みであることに違いない。
チェックのシャツのおじさんが居た場所は、市道よりかなり奥。
私道に設置された、立ち入り禁止のロープを躊躇なく越えてるんだろうな。

小学生の頃、親戚一同、子供達まで集められ、車でどこかの山の山菜を採らされた。
今にして思うと、あのとき大人達は山の所有者に許可をもらっていたのだろうか・・・。
限りなく怪しい。
私の記憶に残った言葉は、「全て採らずに来年のために半分残す」。
イヤイヤ~。
確かにその通りだけど、でもそういう事じゃないよね。
日本の全ての土地に所有者がいる。
昔から大丈夫だったんだから、今もいいでしょ?と、早朝から美味しい山菜・美しい山野草の盗品・盗掘に精を出す。

人間は熊よりも欲深く恐ろしい。


何でもそうだけど、シダも出始めが美しいと思う。
トップの写真も、この写真も「オシダ」。
新芽の茎に大きく太い、もじゃもじゃ毛があるのが特徴。
食べられない。
というか、不味いらしい。
でも食べられなくても、このオシダ。
山野草のネットショップで、なんと!送料別で1ポット1,000円程で売られている。
庭に植えたい人は、自宅まで届くとありがたい。
需要があるから商売が成り立つ。

ちなみに、敬愛するターシャ・テューダーさんの庭にも植えてある「クサソテツ」は、山菜として食べる「コゴミ」のこと。
シダは和洋どちらの庭でも、しっくりと馴染み収まる。

ポール・スミザーさんが著書の中で、山に自生している「ギボウシ(海外名はホスタ・日本では食用のウルイのこと)」を日本人は見向きもしない、と書いている。
日本原産のギボウシがイギリスへ渡り、重宝され、品種改良後、日本へ里帰り。
現在シェードガーデンに欠かせない「ホスタ」として、数多くの品種が高額で販売されている。
価値を知ってる人にとって、自生種は宝の山ということだ。


昨年の下草刈りで、藪だった中低木を伐採したら、今年はニョキニョキと蕨が出た。
この奥に脚あり・笑
山菜はあまり食べないので、そのままにしていたら、あっという間に展葉。
敷地全てが、鬱蒼としたシダの土地になりそう。
草刈りかぁ。。。
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