「 こんなところに独りで怖くないの? 俺は1人じゃ無理だわ。」
昨年、屋根塗装の親方に聞かれた。
親方の突然発言は、一緒に塗っている若い職人くんには、きっと日常なのだろう。
となりで下を向いてニヤっとしている。
「 それは人間のこと? それとも熊とかの動物のこと?」と聞き返したが、話しが本業の塗装へ転じたので、親方が無理なのが何かは分からずじまい。
私も答えずじまい。
残念。
その時の私なら。
「 ひとりは慣れたけど、熊が怖い。」と答えたと思う。
除雪道が無いので通年利用を諦め、4月から11月までを山のなかで暮らす。
ひとりが怖くないといえば嘘になるし、有事にきっと迷う。
でも山の家は静寂。
何かに、誰かに、時間を拘束されることがない。
やりたいことを楽しむ。
しかし、住んでいると疑問に思うこともある。
区割りされた広い広い土地に、なぜ建物がこれほど少ないのだろう?
道などの共有部をパトロールしたり整備する、通いの管理人さんはいるけど、家はポツンポツンとわずか数件。
草刈りされた土地もあるが、多くが雑木と雑草と熊笹が生い茂る原野。
遠くに窓の灯りが見える日もあれば、滞在中ずっと真っ暗な夜もある。
今後新しく家が建つことは無さそうな、限界別荘地だ。
昨秋、ご近所の年配の紳士が散歩中、我が家の前を通られたので、挨拶を交わした。
紳士の家は、数十年前の販売直後に建られたとのこと。
これ幸いと、当時から現在までの変遷を少し教えて頂いた。
開発時にモデルハウスとして、都会の業者が建てた家が、翌年の豪雪であっけなく潰れたこと。
主が亡くなり、相続した家族も来なくなり、凍結した水道管の破裂で多額の水道料金が発生し、家屋が撤去されたこと。( これは山に限らず、地元の空家でもおきる )
主が亡くなり、相続した奥さんが不動産会社に査定してもらうと、価格が二束三文だったので、売らずにそのままになっていること。( 勿体ない… )
頑丈な基礎の上にしっかりとした小屋を建てたけど、入口の支柱が雪の重みで歪んだり折れたりして、もう直さないと話していたこと。( 勿体ない… )
冬はみなさま公道からスノーシューを履き、建物の確認と雪下ろしに来ていること。( …それは無理 )
熊、猪、鹿、狐、穴熊、リスが生息。なぜか猿がいないこと。( 確かに猿はいない。狐を見た。リスに逢いたい♡ )
限界ニュータウンや限界別荘地の動画をYouTubeで見ると、ホント勿体ないなぁと思う。
いずれ退職したらと、当時高額なお金を払い購入した土地が、建てず使わず年月を経て荒れ地となり、家族も興味がなく、安く売ろうにも買い手はつかず、毎年固定資産税と管理費を払う『負動産』に。
所有者行方しれず、相続人不明の土地も多いらしい。
震災とコロナで、老若男女全ての人の働き方、住まい方は大きく変わった。
この先どう生きるか?について、それぞれが考えた。
リモートワークは定着し、デュアルライフ( 複数拠点居住 )者は予想を越え、先日見たテレビで確か国内推計576万人、あるホームページだと推計1000万人を越えているらしい。
過疎地に若者が増えた、とか、田舎の古民家をDIYでリノベしているYouTuberがいたり、新しい場所で自分達だけのライフスタイルを作りあげている。
頼もしい。
日本の木造住宅は、高温多湿によるところも大きいが、長く快適に暮らせる構造に設計されていない。
とりあえず30年か40年もてばいいや、古屋を壊してまた建て替えれば。
スクラップアンドビルドの繰り返し。
それと中古より新築を好む。
そりゃあ誰だって、新しいほうがいいに決まってる。
田舎の古くさくて寒い実家をそのままに、地の利が良い場所に、快適でオシャレな新築を求めるので、これでは空き家は増える一方だ。
そろそろ短期間で建てては壊すをやめて、生きたい場所で、資産価値ある100年つづく家に住み、次に欲しい人に繋がるといいな。
話しを『 怖いもの 』に戻す。
最初はあまりにも静かで、なかなか寝付けずにいたけど。
いつの間にか慣れるもので、さっさと寝て、早朝に覚め、朝から緑と鳥を眺める。
まこと健康によい日々。
リモートワークや、床下でDIY気密UP作業をしている分に問題はないけど、草刈りなどの屋外作業が不安だ。
すぐ持てるよう腰にクマ撃退スプレーを装着し、熊に気付いてもらえるよう携帯電話のAppleMusicを大音量で流す。
濃霧と強風の日は、耳と目と鼻を全集中。
近距離でバッタリ遇う事がないよう、そういう日はなるべく外作業はやめる。
熊による人身事故の本を数冊購入した。
熊に襲われた「 県別事故数 」は、なんと2拠点どちらもベスト10入りしてる。
どういう行動が襲われやすいのか、どのように対処すべきか、参考になる研究家や被害者の体験談だった。
また、前出の紳士によると、猪もいるとのこと。
猪突猛進に止まる選択肢がない。
興奮し鋭い牙で走ってくると、もう逃げ切るしか手立てがなく、熊より恐ろしいかもしれない。
やはり怖いのは人間よりも動物でしょう。
ところが。
今年に入り、連続して在宅中の高齢者が狙われた強盗殺傷事件。
日本中の善良な人々を震撼させた。
我が家のセキュリティは大丈夫?
在宅を知って襲われるなら、どうやって身を守ればいいの?
いったい何の情報に基づいて狙われたの?
みんな一様に思ったはずだ。
真っ暗な木立の奥深く。
ただひとり。
自分の身は自分で守るほかない。
真夜中、行き止まりの道に車が現れたらどうすれば?
凶悪な人間にも、想定内で対処できるといいけれど。
できるかなぁ‥。

Klaus Haapaniemi (クラウス・ハーパニエミ )さんのデザイン。
廃版ファブリック。
ハーパニエミさんといえば、iittala (イッタラ。フィンランドのガラスと陶器の会社 ) の taika (タイカ。フィンランド語で魔法 ) シリーズが有名で、私もマグとお皿を持っている。
不思議の森に住んでいるようで、とても気に入っている。